瀬戸焼は、愛知県瀬戸市が発祥の地と言われています。瀬戸市がある地域は、11世紀ごろのものとされる灰釉陶器を焼いた窯が見つかっており、古くから焼き物が生産されていたことがわかります。愛知県の猿投地区では、古墳時代の5世紀ごろからすでに窯業が盛んでした。焼き物づくりは猿投地区から周辺地域へも広まっていき、瀬戸市の周辺でも徐々に窯業がスタートします。鎌倉時代に入ると、瀬戸市の窯でも印花文などの装飾を施した作品が誕生しました。 室町時代ごろまでは皿などの日常生活で使用する器が多くつくられていましたが、安土桃山時代に入ると茶の湯文化の影響で茶器が生産されるようになります。瀬戸焼の茶碗は、徳川家などの将軍家でも珍重されるようになり、美術品としても注目を浴びるようになりました。19世紀の初めには、加藤民吉が磁器の技術を用いて瀬戸染付焼の基礎を確立します。瀬戸染付焼は、平成9年に伝統工芸品に指定されました。
瀬戸焼の特徴
瀬戸焼は、制作された時代で古瀬戸と瀬戸とに大きくわかれます。古瀬戸は、室町時代ごろまで瀬戸市周辺で生産されていた伝統的な製法でつくられた焼き物のことです。瀬戸は、室町時代以降に生産されるようになった比較的新しい時代の焼き物です。江戸時代にはすでに、この古瀬戸と瀬戸がそれぞれ別なものとして扱われていました。古瀬戸は、全体に釉をかけて仕上げてあるのが特徴で、茶色や緑がかった色合いをしています。鵜の斑と呼ばれる青いまだら模様が見られることも多く、古瀬戸は骨董品としても評価が高い焼き物のひとつです。 また、生産された地域によっても、瀬戸焼は種類が異なります。例えば、瀬戸市の赤津地区で生産されているのが赤津焼です。赤津焼は、7種類の釉を使い分けて個性豊かな風合いを出すのが特徴になっています。釉で仕上げた表面に櫛目や印花などの文様を入れて、装飾をおこなうのが赤津焼のスタイルです。19世期に加藤民吉が始めた瀬戸染付焼は、白い地に花鳥画や山水画などの絵柄を藍色で施した磁器です。このほか、斬新なデザインが特徴の瀬戸織部などがあります。
瀬戸焼のアイテム
瀬戸焼には、大型の酒器から小さな皿、湯呑までいろいろなアイテムがあります。歴史を感じさせる古瀬戸のアイテムでは、やや大きな瓶子などがよく紹介されます。鉄釉をかけた鎌倉時代の瓶子などは黒く滑らかな質感が特徴になっており、骨董品としても価値がある一品です。日常使いができる酒器では、ぐい吞みや徳利、猪口などが代表的なアイテムです。モダンなデザインと相性がよい瀬戸織部のアイテムでは、抹茶茶碗やコーヒーカップ、急須などが人気があります。めし椀や皿、そば猪口といった食事で使用する器も、瀬戸焼の代表的な品々です。 釉で印象が変わる瀬戸焼は、花器や人形などのインテリアアイテムに取り入れられるケースも増えています。デザインや色、質感などにバリエーションがある瀬戸焼の場合、実用品としてはもちろんですが、鑑賞用の器としても広く活用されています。